配偶者側の親族に財産を渡したくない場合の家族信託

家族信託の活用事例

日本は高齢化が問題となっていますが、少子化も実は問題になっています。

結婚されていても子供がいないご家庭も多く、その場合の相続に関しても悩ましい問題があるのです。

例えば、

「自分の財産について、配偶者に相続させるのは良いけれど、配偶者側の親族には渡したくない」

と考えた場合です。

実はこのケースの解決方法、家族信託を活用する事が解決方法の一つとして考えられるのです。

1.具体的事例紹介

太郎さんは東北のとある県で、先祖から引き継いできた土地を守り生活しています。

太郎さんには妻の花子さんがいますが、二人の間には子供はいません。

太郎さんが父から相続した土地は、先祖が代々守ってきた由緒正しい土地です。

その為、太郎さんの一族はずっとこの土地を相続し、守ってきました。

太郎さんには子供がいない為、もし太郎さんが亡くなった場合、全ての財産は妻の花子さんと太郎さんの兄弟姉妹が相続する事になります。

太郎さんはもし自分が亡くなった場合は、花子さんに自宅で今までどおり平穏に生活してほしいと考えています。

その一方で、もし花子さんが亡くなってしまった場合、二人には子供がいませんので、先祖伝来の土地が花子さんの親族の手に渡ってしまう事が気がかりになっています。
  
「そんな事になってしまったらご先祖様に申し訳ない。」

その為、もし自分と花子さんが亡くなった場合、最終的には甥っ子の一郎さんに先祖伝来の土地を引き継いでもらいたいと太郎さんは考えています。

しかし、具体的にどうすれば良いかと、太郎さんは日々頭を悩ませている状態なのです・・・。

2.家族信託以外の解決方法

① 養子縁組を行う

信頼が出来る年下の人間と養子縁組を行い、養子に相続をさせる事で、妻の親族に財産が渡る事を防ぐ事が出来ます。

しかしながら、養子縁組は当事者の合意が必要な為、養子予定の人に養子縁組を断られてしまったらこの方法は選択する事が出来ません。

また、そもそも法律上の親子関係を作る事そのものに心理的な抵抗を持つ人だって少なくないはずです。

② 遺言書を作成する

「全ての財産を妻の花子さんに相続させ、花子さんが亡くなった場合は甥っ子の一郎さんに相続させる」

と言った遺言を作成すればどうでしょうか?

確かにこの方法であれば財産を引き継ぐ先を指定していますので、妻の親族には財産が渡らないように思えます。

しかし、実はこのような、相続人が亡くなった後に自分の財産を引き継ぐ者を決める遺言は無効です。

それでは、妻の花子さんに「全ての財産を一郎さんに遺贈させる」旨の遺言を作成してもらうのはどうでしょうか?

花子さんの兄弟姉妹は花子さんの相続について、最低相続分である遺留分はありません。

この方法であれば確実に太郎さんの子孫に先祖伝来の土地を引き継がせる事が出来る様に思えます。

しかし、遺言を書くか書かないかはあくまで花子さん自身の意志が必要ですし、また花子さんがもし認知症になってしまったら、遺言を作成する事そのものが難しくなります。

3.家族信託による問題解決方法 -後継ぎ遺贈型の受益者連続信託-

それでは、太郎さんの希望を家族信託を利用して叶えてみましょう。

まず委託者兼受益者を太郎さん、受託者を一郎さんとします。

信託の目的を

「太郎さんが生きている間は太郎さんの生活を守り、太郎さん亡き後は妻の花子さんが自宅で今までと変わらない生活を送らせること」

と言う趣旨の目的として、自宅を含めた先祖代々の土地およびそれらの土地の維持・管理をする為の金銭を信託財産とします。

そしてここからが重要なのですが、太郎さんがもし亡くなった場合の受益者(二次受益者)を花子さんとします。

こうする事により太郎さんが亡くなった場合も花子さんの生活は今までと変わらないものになります。

また、花子さんがもし亡くなった場合の受益者(三次受益者)を一郎さんとし、同時に信託を終了させます。

そして信託終了時に残っている財産を一郎さんのものとする事で、最終的に一郎さんに先祖伝来の土地を引き継がせる事が可能になります。

【※注意点※】
受益権を引き継ぐ受益者の人数については制限はありません。

しかし、信託期間は、信託がされたときから30年を経過後に、新たに受益権を取得した受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでとされています。

つまり、信託開始から30年を経過した後は、受益権の新たな相続(引き続き)は一度しか認められない事に注意が必要です。

4.まとめ

本事例の信託は、「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」と呼ばれるものです。

これは遺言では出来ない、ご自身の財産を引き継ぐ者を指定したい時の方法の一つとして注目されています。

ご自身の財産の行く末をご自身で決められたい場合は、家族信託の活用を一度ご検討してみて下さい。

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