受益者代理人と信託監督人とは?その違いを解説します

家族信託の基本

こんにちは。司法書士の甲斐です。

家族信託の基本的な登場人物は、委託者、受託者、受益者の3人ですが、家族信託ではこれ以外にも重要な登場人物が存在します。

それが今回ご紹介する「受益者代理人」と「信託監督人」です。

今回は、この二つの登場人物が家族信託においてどのような役割を果たしているのか、そしてどのような違いがあるのかを分かりやすくお話ししていきます。

1.受益者代理人

① 受益者代理人とは?

受益者代理人とは、文字通り「受益者の代理人」であり、受益者の為に受益者の権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者です。

(受益者代理人の権限等)
信託法第139条 
受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(第42条の規定による責任の免除に係るものを除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

例えば、認知症対策における家族信託で、実際に受益者が将来認知症になった場合、信託の内容の変更を行う事が難しくなります。

このような事態に備えて、予め受益者代理人を選任しておくと、受託者と受益者代理人とで信託の内容を変更する事ができ、円滑に信託を運営する事が出来ます。

② 受益者代理人の選任方法

受益者代理人は信託契約や遺言等、信託行為のみで選任する事が出来ます(信託法138条1項)。

受益者代理人は裁判所等で選任する事が出来ませんので注意が必要です。

③ その他、注意事項

受益者代理人が選任されると、受益者自身の権利行使が一部制限されます(信託法139条4項)。

この点は受益者自身にきちんと説明し、理解してもらうようにしないと、後々トラブルになりますので注意しましょう。

2.信託監督人

① 信託監督人とは?

信託監督人は受託者の業務を監督し、受益者を保護する人です。

受益者代理人も受託者の監督権限があるのですが、信託監督人はこの受益者代理人の監督権限を取り出した人物、とイメージすると分かりやすいと思います。

(信託監督人の権限)
信託法第132条 信託監督人は、受益者のために自己の名をもって第92条各号(第17号、第18号、第21号及び第23号を除く。)に掲げる権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

例えば、受益者が障がい者や幼い子供等の場合、受託者の業務を適切に監督する事が難しいでしょう。

このような場合に信託監督人を選任しておくと、受益者を保護する事が可能になります。

② 信託監督人の選任方法

受益者代理人とは異なり、信託行為(信託契約や遺言等)の他、利害関係人の請求により、裁判所が選任する事が出来ます。

③ その他、注意事項

信託監督人は弁護士、司法書士等の専門家が選任される事が多く、その場合は報酬が発生します。

なお、信託監督人が選任された場合でも、受益者の権限は制限されません。

3.受益者代理人と信託監督人に共通する事

① 信託法上の義務

受益者代理人、信託監督人ともに信託法上様々な義務があるのですが、代表的なものが善管注意義務、誠実公平義務です。

善管注意義務とは、その業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務の事です。

誠実公平義務とは、受益者のために誠実かつ公平に業務を行わなければならないと言う義務です。

② なれない人

未成年者と受託者は受益者代理人・信託監督人になる事は出来ません。

逆に言えば、それ以外の人は受益者代理人・信託監督人になる事が出来ます。

③ 辞任方法

受益者代理人・信託監督人ともに、委託者及び受益者の同意を得て辞任する事が出来ます。

なお、やむを得ない理由がある時は、裁判所の許可を得て辞任する事が出来ます。

(信託行為に別の定めがある時は、それに従う事になります。)

4.受益者代理人と信託監督人、どのように使い分ければ良いか?

受益者代理人と信託監督人は似ている部分もあり、しかしながら大きく違う部分もありますので、その使い分けが重要になってきます。

受益者代理人は受益者が持っている権限のほとんどを持っており、さらにその権限を独占的に行使する事ができる事から、

・受益者が複数で頻繁に変動する場合で、受益者による意思表示が困難な場合。

・受益者が知的障がい等で意思能力に問題がある場合や、今後意思能力に問題が発生する恐れがある場合。

このようなケースであれば、受益者代理人を選任した方が良いでしょう。

一方、信託監督人の場合は、

・受益者の意思能力には問題がないが、信託財産が高額な為、受託者の監督の必要性がある場合。

・受託者が法律に馴染みが薄く、専門家のサポートを受けた方が良い場合。

このようなケースは信託監督人を選任した方が良いでしょう。

5.まとめ

家族信託は後見制度とは異なり、受託者の業務について裁判所が監督する事はありません。

その為、受託者の業務がブラックボックス化され、不適切な財産管理が行われる問題も発生しております。

裁判所の監督が無いと言う事は「不適切な財産管理をして良い」と言う話しではなく、「受託者の責任でしっかりと財産管理を行う法律上の義務がある」と言う事です。

その為、今回ご紹介した受益者代理人と信託監督人の違いを良く理解して頂き、適切な監督者を設けて、問題がない家族信託を運営するようにしましょう。

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この記事の執筆者(詳細は名前をクリック)

元役者の司法書士/2級FP技能士。「難しい事を分かりやすく・親しみやすく」がモットー。法律・老後資金・感情等、多角的な視点で考える「もめない相続」の専門家。事務所は町田駅徒歩8分。
福岡県出身/某球団のマスコットの中に入っていた事も/元人材派遣会社の業務アウトソーシングコンサルタント/温泉が大好き

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