家族信託で新しい受託者への引き続ぎ方法は?

受託者

こんにちは。

家族信託は、場合によっては長期間続く事があり、当初想定されなかったトラブルが発生する事があります。

その一つが、「受託者の交代」です。

受託者自身が亡くなったり、一身上の都合で辞任しなくてはいけない状況になる事だってあるでしょう。

でも、そのような時でも家族信託は原則終了せず、新受託者が選任されて、家族信託は継続します。

では、前受託者から新受託者への引継ぎはどうすれば良いのか?

今回は、その「受託者の引継ぎ」をテーマにしたいと思います。

基本的には、どのような理由で前受託者の仕事が終了したかによって、その後の手続きは多少異なります。

それでは詳しく見て行きましょう。

1.受託者が亡くなった場合

① 前受託者の相続人から受益者への連絡

前受託者の相続人が受益者に対して、受託者が亡くなった事、前受託者の仕事が終了した事を連絡します。

(信託契約書等で別の定め方をした場合は除きます。)

② 信託財産の保管・仕事の引継ぎ等

前受託者の相続人は、新受託者がその仕事を行う事ができるようになるまでの間、信託財産の保管と受託者の仕事の引継ぎに必要な行為を行う義務があります。

そして新受託者が就任した場合には、前受託者の相続人は、速やかに今まで行った仕事に関する計算(収入や支出の計算と思って下さい)を行います。

また、受益者に対して行った計算の承認を求め、新受託者への引継ぎを行う必要があります。

③ 新受託者の権利義務の承継について

新受託者は、前受託者の仕事が終了した時に、その時に存在する信託に関する権利や義務を、前受託者から承継したものとみなされます。

2.前受託者が後見(保佐)開始の審判を受けたとき

① 成年後見人(保佐人)から受益者への連絡

前受託者の成年後見人(保佐人)が受益者に対して、受託者が後見開始(保佐開始)の審判を受け、前受託者の仕事が終了した事を連絡します。

(信託契約書等で別の定め方をした場合は除きます。)

② 信託財産の保管・仕事の引継ぎ等

前受託者の成年後見人(保佐人)は、新受託者がその仕事を行う事ができるようになるまでの間、信託財産の保管と受託者の仕事の引継ぎに必要な行為を行う義務があります。

そして新受託者が就任した場合には、前受託者の成年後見人(保佐人)は、速やかに今まで行った仕事に関する計算を行います。

また、受益者に対して行った計算の承認を求め、新受託者への引継ぎを行う必要があります。

③ 新受託者の権利義務の承継について

前受託者が亡くなった場合と同様、新受託者は、前受託者の仕事が終了した時に、その時に存在する信託に関する権利や義務を、前受託者から承継したものとみなされます。

3.前受託者が破産手続き開始の決定を受けた場合

① 前受託者から受益者への連絡

前受託者が受益者に対して、前受託者が破産手続き開始決定をうけた事、その為に前受託者の仕事が終了した事を連絡します。

(信託契約書等で別の定め方をした場合は除きます。)

② 前受託者から破産管財人への連絡

前受託者は、破産管財人に対して、信託財産の内容及びその所在、信託財産責任負担債務の内容等を連絡する必要があります。

【信託財産責任負担債務】
文字通り、信託財産によって責任を負担することになる債務の事です。
例えば、受託者が権限内において、信託財産である建物のリフォームを行った場合の、その費用の支払い等です。

③ 信託財産の保管・仕事の引継ぎ等

破産管財人は、新受託者がその仕事を行う事ができるようになるまでの間、信託財産の保管と受託者の仕事の引継ぎに必要な行為を行う義務があります。

そして新受託者が就任した場合には、破産管財人は、速やかに今まで行った仕事に関する計算を行います。

また、受益者に対して行った計算の承認を求め、新受託者への引継ぎを行う必要があります。

④ 新受託者の権利義務の承継について

前受託者が亡くなった場合と同様です。

4.「委託者及び受益者の同意を得た辞任」もしくは「信託契約等で定めた方法による辞任」の場合

① 前受託者から受益者への連絡

前受託者が受益者に対して、受託者が辞任した事により、前受託者の仕事が終了した事を連絡します。

(信託契約書等で別の定め方をした場合は除きます。)

② 信託財産の保管・仕事の引継ぎ等

前受託者は、新受託者がその仕事を行う事ができるようになるまでの間、引き続き受託者として権利義務を有する事になります。

そして新受託者が就任した場合には、前受託者は、速やかに今まで行った仕事に関する計算を行います。

また、受益者に対して行った計算の承認を求め、新受託者への引継ぎを行う必要があります。

③ 新受託者の権利義務の承継について

新受託者は、新受託者が就任した時に、その時に存在する信託に関する権利や義務を、前受託者から承継したものとみなされます。

5.新受託者の選任について

さて、上記の中で新受託者の事が頻繁に出てきましたが、そもそも新受託者はどのように選任するのでしょうか?

その事についても簡単に触れておきましょう。

① 信託契約等で新受託者を定めている場合

その定められた人物が、「受託者になって良いですよ」と就任OKの意思表示をすれば、その人物が新受託者になります。

もし、新受託者候補の人物に「やっぱり無理です」と就任を断られた場合、委託者と受益者の合意で新受託者を定める事ができます。

② 委託者と受益者が新受託者について合意しない場合

信託契約等で新受託者が定められていなかった場合、もしくは定めていたけれど就任を断られた場合で委託者と受益者が合意しない場合、

委託者と受益者の合意に係る協議の状況その他の事情に照らして必要があると認めるとき
上記の条件を満たした時に、利害関係人が裁判所に申し立てる事により、裁判所が新受託者を選任します。

もし上記の条件を満たさない場合で、新受託者が就任しない状態が1年間続いた場合、家族信託は終了します。

③ 委託者が存在しない場合

信託契約等で新受託者が定められていなかった場合、もしくは定めていたけれど就任を断られた場合で委託者が存在しない場合は、受益者が新受託者を選任する事になります。

しかし、様々な事情で受益者が新受託者の選任を行う事が出来ない場合、上記②の条件を満たした場合、裁判所に対して新受託者選任の申立て行う事ができます。

上記②の条件を満たさない場合で、新受託者が就任しない状態が1年間続いた場合、家族信託は終了します。

6.まとめ

このように、受託者が辞任等による前受託者から新受託者への交代に関する規定は、信託法上詳細に決められています。

受託者の交代は、それだけ当然に起こり得る事ですし、受託者が交代しても良いように、信託契約等の内容は作り込む必要があるでしょう。

具体的には当初の受託者の不足の事態に備え、信託契約等の中であらかじめ新受託者を何名か定めて置く事が必須となります。

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