家族信託のもう一つの形、遺言信託とは?

家族信託の基本

こんにちは。

家族信託を行う方法として、委託者と受託者が契約を行う「信託契約」があり、家族信託と言えばこの信託契約がメインになります。

しかし、契約以外の方法で行う信託があるのをご存知でしょうか?

今回は契約以外の信託、遺言で行う「遺言信託」のお話しを行いたいと思います。

1.遺言信託(遺言による信託)とは?

家族信託は委託者と受託者の契約で行う「信託契約」の他に、委託者が遺言で行う、「遺言信託」があります。

信託法上の「遺言信託」は信託銀行の「遺言信託」とは異なります。
信託銀行が提供している「遺言信託」とは、遺言書作成の相談、遺言書の保管、遺言の執行を行うサービスの事です。
上記の信託銀行の遺言信託の説明について、誤った内容を紹介しているWebサイトが多いのでご注意下さい。

信託銀行の「遺言信託」は信託法とは一切関係ありません。

信託法上の遺言信託(信託銀行が行う遺言信託と区別する意味で『遺言による信託』と呼ばれる事もあります)は、具体的に言いますと、

・財産を残す人(委託者)が、
・信頼が出来る家族等(受託者)に、
・委託者が指定する財産(信託財産)を、
・委託者が定める目的(信託目的)に従い、管理・処分等をする旨を
・委託者が遺言の中でお願いして、
・委託者が死亡した後にスタートさせる信託の事です。
「遺言」ですので有効な遺言である事は絶対条件なのですが、それ以外の決まりはない為、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも問題はありません。

しかし、遺言信託はあくまで委託者が亡くなった後にスタートするものであり、何かあった時に委託者の意思を確認する事はできません。

その為、公正証書で遺言信託を行った方が無難でしょう。

また契約とは異なりあくまで「遺言」なので、受託者の意思は関係なく行う事ができます。

※ただし、事前に受託者予定の人に根回しをして、その了承を得るのが良いでしょう。

2.遺言信託を選択した方がよい場合 -負担付遺贈の代わり-

遺言信託は様々なケースで活用する事ができると思うのですが、真っ先に思いつくのが、「負担付遺贈」の代わりとして活用する事でしょう。

負担付遺贈とは、例えば、

「自宅と金銭を相続させる代わりに、相続させる自宅に遺言者の配偶者(妻)を住まわせて、その生活の支援を義務付ける。」

と言った、財産を受け取る側(受遺者)に負担を求める遺言です。

しかし、受遺者はしばらくは母親の面倒はみるものの、そのうち生活支援をやめてしまい、他の兄弟姉妹に母親を押し付けてしまうと言う事態に発展する事もあります。

この場合、他の相続人は負担付遺贈が記載された遺言の取り消しを家庭裁判所に請求する事が一応できます。

しかし、「母親が勝手に家を飛び出しただけ」と言われてしまえばそれまでですし、またそもそも受遺者を監督する仕組みが負担付遺贈にはありません。

このような時に、受託者を子供、受益者を母親とする遺言信託を行い、その目的を「受益者である母親の生活を支援する事」と言った趣旨にすれば、遺言者の希望は叶える事ができます。

信託では受益者を保護する為の仕組みがあり、受益者代理人や信託監督人に受託者の仕事をチェックしてもらう事ができます。

そうすれば、万が一受託者が何らかの不適切な行動を行った場合、その行為の指し止め請求や、場合によっては受託者を解任する事も可能になります。

3.遺言信託を行う上での注意点

大きな注意点は、遺言信託は遺言である以上、成年後見人に信託予定の財産を処分される可能性があると言う点です。

詳しく説明しますね。

遺言信託で信託予定の財産を定めた後に、遺言作成者が認知症等で意思能力・判断能力が低下して、成年後見人が選任されたとします。

この成年後見人が、様々な理由から、本人の意思に反して、信託予定の財産を処分する可能性もあるのです。

遺言信託はあくまで遺言者が亡くなった後にスタートする信託です。

その為、信託予定の財産はまだ遺言者の財産であり、成年後見人の管理下に置かれるので、その結果として処分も可能になるのです(家庭裁判所への相談が行われますが)。

その為、まずは信託契約を行う事を検討し、それでも難しい事情がある時に遺言信託(+任意後見)を選択した方が良いでしょう。

(信託契約であれば信託財産は委託者本人の財産から切り離されます。その為、本人の成年後見人は信託財産を管理・処分する事が出来ません。)

4.まとめ

信託契約も遺言信託も同じ信託ですが、遺言信託の場合、信託の効力が発生した時には委託者はいません。

その為、残された家族が遺言を見て

「これってどう意味?」

と疑問にならないように、遺言信託は作りこむ必要があります。

このように遺言信託は信託契約よりも考える事、配慮すべき事がありますので、遺言信託をお考えの場合、専門家へご相談する事をお勧めします。

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