親が認知症になった場合に備える家族信託

家族信託の活用事例

家族信託を利用されたい方の理由として一番多いのが、この、「認知症対策の為の家族信託」です。

家族信託としてはオーソドックスな形なのですが、実際にどのように活用するのか、具体的に見て行きましょう。

1.具体的事例

太郎さんは今年75歳になる男性です。

奥さんを数年前に亡くし、子供は3人いるのですが、3人とも独立しており、今は自宅でのんびり独り暮らをしています。

そんな折、太郎さんは、たまたま『認知症』をテーマにしていたテレビ番組を見ました。

「そろそろ自分も認知症になっても良いように対策をしなくては」

と太郎さんは考えるようになったのです。

太郎さんの心配ごとは次の点です。

【今後の生活に全般について】

・高齢になり、足腰が悪くなって気力も体力も低下し、外出するのも一苦労。

・物忘れも酷くなってきており、将来認知症になってしまったらどうしようか?

 
【自宅の管理や売却について】
・もし自分が認知症になったとしても、子供達に迷惑をかけたくはないから、自宅を売却してどこかの施設に入所したい。

・自宅は築50年であちこちガタがきていて、この際、バリアフリーのリフォームを行いたい。

しかし、業者との打合せや契約は自分一人で果たして出来るのか?悪徳業者に騙されはしないだろうか?

 

【アパートの管理について】
・太郎さんは自宅以外にもアパートを所有しており、賃借人や管理会社との対応に関して、全て信頼をしている長男の一郎さんに任せている。

今後も一郎さんに任せたいと思っているが、一郎さんはアパートの所有者ではない。

その為、一郎さんがアパートに関する手続を行う法的な根拠がなく、管理会社から、太郎さんがきちんと対応してほしいと再三再四にわたり言われている。

等々、考えれば考えるほど、様々なお悩みが出てきて、

「この先一体どうすればいいんだろう・・・。」

と心配で夜も眠れない状態が続いているのです。

2.他の方法での解決は可能か?

太郎さんが抱えている問題を、家族信託以外の方法で解決する事が出来ないか考えてみましょう。

まず太郎さんは将来認知症になる事を心配しています。

もし認知症になって意思能力や財産の管理能力が低下した場合、ご家族が勝手に太郎さんの財産を管理する事が出来る法律上の根拠はありません。

その為、家庭裁判所に対して後見の申立を行う必要があります。

そして、家庭裁判所から選任された成年後見人が太郎さんの財産を管理する事になるのですが、その財産の管理方針は原則的に「現状維持」です。

例え認知症になって施設に入所する必要があったとしても、自宅の売却には家庭裁判所の許可が必要になります。

その許可は「自宅を売却する合理的な理由」が無ければ出ません。

例えば、

・一人暮らしが出来ない。
・現金がなく、施設への入所費用を用意する事が出来ない。
・認知症が進行しており、本人が自宅に帰る事が出来る見込みがない。

等の理由が必要になり、その時の事情によっては中々許可が降りない事だったあります。

また、自宅のリフォームに関しても成年後見人が行う必要がありますが、成年後見制度の財産管理の考え方に立つと、これも場合によっては難航する事もあるでしょう。

次に、アパートの事について考えてみましょう。

アパートに関しては、一郎さんが色々と賃借人や管理会社とのやり取りを行っています。

ところが、一郎さんはアパートの所有者ではない為、様々な対応や契約ごとを適法に行う為には、太郎さんがその都度、一郎さんに委任する必要があります。

これは非常にわずらわしいですし、太郎さんがもし認知症になったら、委任する事も出来なくなります。

このように、現状の制度では太郎さんの問題を解決する事も、希望を叶える事も難しいと言えます。

3.家族信託を活用すると・・?

それでは、今回のケースで家族信託を利用するとどうなるのかを見ていきましょう。

まず、委託者兼受益者を太郎さん、受託者を太郎さんが信頼している長男の一郎さんにします。

自宅を信託財産にする事で、自宅の名義は長男の一郎さんとなりますが、太郎さんは受益者ですので、そのまま自宅に住み続ける事が可能となります。

万が一太郎さんが認知症になり、どこかの施設へ入所する必要が発生した場合、太郎さんの希望通り、一郎さんが自宅を売却する事が可能です。

太郎さんや成年後見人の関与は必要ありません。

また、信託契約の内容に従って、自宅のリフォームも可能です。

これも太郎さんや成年後見人の許可等は必要ありません。

アパートも信託財産にすると、賃借人や管理会社との契約ごとは全て一郎さんが対応する事ができます。

つまり、一郎さんがアパートに関する管理・処分を行う法律上の根拠が生まれますので、管理会社としても一安心になります。

なお、自宅のリフォームやアパートに関する支出の為、ある程度の現金を信託財産にしておくと、一郎さんが行う家族信託がスムーズに進みます。

さらに、図にはありませんが、太郎さんが認知症になったお時に備え、受益者代理人に関する事も信託契約書の中に盛り込んでおくと良いでしょう。

4.まとめ

医療技術が進歩し、人間の平均年齢が高くなった結果、認知症等のリスクは誰もが考えなくてはいけない状況になりました。

ご自身がもし認知症になったとしても、今まで通りの事が出来て、ご家族に迷惑をかけないような対策をしっかりと行っていきましょう。

 

【次の記事はこちら】

障がい者、引きこもりの家族の生活支援の為の家族信託
家族信託は障がい者の方や引きこもりの家族と言った、財産管理に不安な面がある方について、その生活支援を行う為にも活用する事ができます。1.具体的事例紹介太郎さん(82歳)、太郎さんの長男の一郎さん(55歳)、次男の二郎さん(51歳)は...

【「家族信託の活用事例」に戻る】

家族信託の活用事例
このページでは、家族信託の活用事例をご紹介しています。認知症対策のための家族信託障がい者・引きこもり家族の生活支援のための家族信託配偶者に成年後見人がついている場合の、相続対策の為の家族信託事業承継のための家族信託配偶者側...

タイトルとURLをコピーしました