受託者に向いている人は?家族信託の受託者は誰がすれば良いのか

受託者

こんにちは。

家族信託をスタートさせる上で最初の難関になるのが、

「受託者を誰が行うか?」

ではないでしょうか?

「財産の管理って細々して何だか面倒くさそう」

と言ったイメージもあり、中々適任者がいないと言うお話も良く聞くのですが、そもそも、受託者に適した人や、受託者になれない人等、受託者に関するルールは信託法上どうなっているのでしょうか?

今回は、そのお話をしたいと思います。

1.受託者とは?

受託者とは、信託事務(家族信託で決められた仕事)を行う、家族信託の登場人物の中で最も活動的で中心的役割を果たす人物です。

信託法の受託者の定義を見てみましょう。

【信託法第2条5項】

この法律において「受託者」とは、信託行為の定めに従い、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいう。

つまり、家族信託では信託財産の名義は受託者名義になり、一定の目的のもと、信託財産の管理や処分を行う権利や義務を負っています。

信託財産の名義は受託者になりますが、受託者は所有者として好き勝手にできるわけではありません。

あくまで信託契約等で決めた家族信託の目的に従って信託財産の管理や処分ができるだけです。

2.受託者になれない人は?

未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人は受託者にはなれません。

家族信託は受託者が委託者、受益者との信頼関係を元に、信託の目的に従って信託財産の管理や処分を行います。

その為、単独で有効に財産の管理や処分を行う事が出来ない者については受託者になれない事を、信託法で定めているのです。

また、信託監督人及び受益者代理人は受託者を兼ねる事はできません。

それぞれ受託者を管理・監督する役割の立場ですので、当然ですね。

さらに、家族信託と言う枠組みでなく、あくまで事業として受託者を行う場合は、内閣総理大臣の免許を受ける必要があります。

受託者が禁止されているのは以上の者で、これらに該当しなければ誰でも(法人でも)受託者になる事ができます。

3.受託者に向いているのはどんな人?

① 受託者の仕事の内容から考える

では、受託者を誰にすれば良いのか、受託者に向いているのはどんな人なのかをお話ししましょう。

まずは、受託者の仕事から考え、下記のような性格の方が向いていると言えるでしょう。

・几帳面で数字(計算)が得意。
・人の世話を行うのが苦にならない。
・きめ細かく、色々な事に気配りができる。
・コミュニケーション能力に長けている。
家族や親族の中で、このような方に受託者をお願いすると言うのが一般的でしょう。

② 専門家(弁護士・司法書士・税理士等)は受託者になれないのか?

家族信託のご相談を行っていますと、良く、

「先生に受託者をお願いしたいんですけど・・・」

と言われる事があります。

確かに、家族信託は長期間に渡る事がありますし、さらに法律等の専門的知識が必要になってくる場面が多々あります。

その為、弁護士・司法書士と言った専門職に受託者をお願いしたいと言うお気持ちは分かります。

しかし、これは難しいとお答えするしかありません。

なぜなら、事業として受託者を行う場合は、内閣総理大臣の免許を受ける必要があるからです(信託業法第三条)。

弁護士・司法書士等の専門家が受託者になる場合、事業として行わざるをえず(さすがにボランティアで行う事は出来ないでしょう)、それは違法行為となるからです。

その為、どうしても専門家のサポートを受けて受託者としての仕事を行いたい場合は、信託監督人等を専門家にお願いすると言った方法を行うと良いでしょう。

4.受託者を法人とする場合

法人とは、

「人間ではないけれど、法律上人格を認められ、法律行為を有効に行う事ができ、権利・義務の主体となりうる資格を与えられたもの。」

です。

株式会社をイメージしていただけると分かりやすいと思います。

では、法人が受託者になる事ができるのか?と言う点についてもお話しましょう。

まず、一般の株式会社(内閣総理大臣の免許を受けていない株式会社)は受託者になる事はできません。

株式会社の目的は営利活動ですので、内閣総理大臣の免許を受ける必要があります。

その為、内閣総理大臣の免許を受けていない株式会社は受託者になる事はできません。

では法人は原則受託者になる事ができないのか?と言う結論になりそうですが、そうではありません。

法人にも色々あり、営利を目的としない「非営利」の法人もあります。

有名なのが、人の集まりに法人格を与えた「一般社団法人」です。

最近は一般社団法人を利用した家族信託が増えています。

家族を一般社団法人の役員にして、法人が受託者の仕事を行う仕組みです。

これにはメリットもデメリットもあるのですが、それは別の機会にお話したいと想います。

5.委託者(受益者)の任意後見人は受託者を行う事は可能か?

認知症対策の家族信託では、委託者(=受益者)が任意後見契約を締結する事があり、その時に受託者を任意後見人(任意後見人候補者)にしたいと希望される方がいらっしゃいます。

果たして、受託者と任意後見人は同一人物とする事は可能なのでしょうか?

任意後見人は本人の身上監護や財産管理を行う代理人であり、受益者を代理する受益者代理人の立場と同じと考えられます。

そうすると受益者代理人と受託者が(事実上)同じ人物となるので、任意後見人は受託者になれないと言う答えが出そうです。

しかし、任意後見は代理権の範囲を細かく設定する事ができ、その代理権の範囲を信託財産を除く身上監護を中心としたものにすれば、受託者=任意後見人も可能と考える事ができます。

もちろん、利益相反行為にあたる事もゼロではないので、その場合は任意後見監督人に代理してもらう事も必要になるでしょう。

また、信託契約書の条項の作り方にも工夫が必要です。

信託法第31条を見ていましょう。

(利益相反行為の制限)
第31条 受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 (省略)
二 (省略)
三 第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が当該第三者の代理人となって行うもの
四 (省略)
2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第二号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。
一 信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。
(以下、省略)
信託法上、受託者の利益相反行為は禁止されているのですが、

信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき

は利益相反行為がOKとなります。

その為、この規定を信託契約書にしっかりと盛り込む必要があります。

ただし、当然無制限に利益相反行為を行う事は問題になりますし、受託者=任意後見人とする事は、慎重に検討する必要があるでしょう。

6.まとめ

家族信託は信託銀行が行っている商事信託とは異なり、一般の方が受託者を行う事を前提とした仕組みです。

しかし、受託者は誰でも出来るわけでは有りませんし、受託者の選定を誤ってしまえば家族信託が上手く機能しなくなる事もあるでしょう。

だからこそ、受託者候補の方には時間をかけしっかりと説明し、その仕事を行ってもらう必要があります。

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