家族信託の受託者が実際に行う事(日常実務編)

受託者

こんにちは。司法書士の甲斐です。

家族信託を行う方法としてメインとなるのが、委託者と受託者が契約を行う、「信託契約」の方法です。

今では家族信託の本が沢山出ていますし、インターネットでも信託契約のやり方や契約書のひな型が沢山紹介されています。

その為、家族信託を行う最初の段階はイメージしやすいと思うのですが、その後の受託者が行う事についてはどうでしょうか?

家族信託は信託契約を結ぶ事が目的ではなく、その後に問題なく家族信託を行っていく事が重要となってきます。

ですが、その「受託者の実務」について詳しく触れている専門家はまだまだ少なく、受託者になった方も困ってしまうのではないでしょうか?

受託者になったのは良いけど、受託者って具体的に何をすれば良いの?さっぱり分からないんだけど・・・。

そこで今回は、家族信託スタート後に受託者が行うべき事についてご紹介したいと思います。

なお、事例は認知症対策として利用する、良くある家族信託のパターンでご紹介したいと思います。

・事例:認知症対策の為の家族信託
【委託者】父
【受託者】子供
【受益者】父
【信託財産】自宅不動産・金銭

1.財産管理の準備

家族信託は一定の目的のもと、委託者の財産を管理・処分する仕組みです。

その為の準備として、

・信託財産の収支の予定を立てる事。
・日々の仕事を記録する書式を揃える事。
が必要になります。受託者には原則として年1回、決算を行い信託財産の状況を報告する義務があります。
その為、日々の収支記録はそのための必要不可欠な資料となります。(会社の経理の仕事をイメージして頂くと分かりやすいでしょう。)

① 信託財産に関する収支予測

信託不動産に対して日々発生するコストは、信託不動産の支出となります(固定資産税、水道光熱費等)。

通常は信託した金銭からこれらを支払う事になりますが、金銭が少ない場合、受託者の持ち出しになる可能性があります。

その為、事前に収支予想をたて、信託する金銭を確保する必要があるでしょう。

② 信託契約書に管理方法等を定めておく

信託不動産の支出について、その為の積立て、支払方法、清算方法、報告・記録方法等については、出来る限り信託契約書の中で定めておいた方が良いでしょう。

管理・処分に関する事項があいまいな状態であれば、後日家族間で争いになる可能性がある為です。

③ 支出の記録と資料の整理

家族信託を行う上での支出は、場合によって受益者と意見が対立する可能性が出てきます。

その為、何に使ったのか、その必要性はあるのか等についての事情を記録しておく必要があるでしょう。

※出来れば(金額にもよりますが)支出する前に受益者と事前に打合せを行った方が良いでしょう。

2.信託事務日誌について

受託者として実際に行った仕事について、記録を残す為に日誌を作成するのですが、その作成頻度は特に決まりはありません。

きちんと収支の管理ができ、日々の管理状況を記載していれば良いので、例えば下記のような表形式のものをメインとして、その他の特記事項があれば別形式で日誌を作成する方法が考えられます。

 信託事務日誌(例)
 支出信託財産(現金)残高信託事務内容
〇月
〇日
 司法書士費用
〇〇円
信託登記登録免許税
〇〇円
 〇〇円司法書士〇〇に対する信託
不動産の信託登記の依頼
〇月
〇日
〇月分電気代
〇〇円
 〇〇円 〇月分の電気代支払い
〇月
〇日
〇〇町内会会費
〇〇円
 〇〇円町内会費(年間)の
支払い
〇月
〇日
固定資産税
〇〇円
〇〇円第〇期分固定資産税
             信託事務日誌(例)
【本日の信託事務の内容】・委託者の認知症が進んでおり、信託契約に基づき、信託不動産の売却の為、〇〇不動産と面談。売却を行う場合の具体的な方法の説明を受ける。
・委託者から事前に指図された〇〇老人ホームとの打合せを行う。入所費用、入所契約の説明を受ける。【受益者への連絡事項】
・不動産の売却の件、老人ホームへの入所の件

【添付資料】
・信託不動産売却時の見積もり
・〇〇老人ホームの契約書・費用見積もり

3.金銭の追加信託

信託不動産の支出や、家族信託を行う上でのその他費用を賄うため、追加で金銭の信託を行う事があります。

これらは事前に信託契約書の中で規定していると思いますので、その通りに行えばOKです。

基本的には書式を使って、委託者に対して追加信託を依頼した方が良いでしょう。

              追加信託の依頼書(例)委託者兼受益者 〇〇 様受託者〇〇は、委託者兼受益者〇〇との間の平成〇年〇月〇日付け不動産管理処分信託契約(以下、「本信託契約」と言います。)に基づき、本日以下の依頼を行います。

1.本信託契約書〇条に基づき、平成〇年〇月〇日までに、金〇〇円の追加信託をお願い致します。

2.前項の追加信託の金銭は、下記の口座に振り込みをお願いします。

銀行名・支店名  〇〇銀行〇〇支店
預金種目     普通
口座番号     〇〇〇〇〇〇〇
名義人      〇〇〇〇

平成〇年〇月〇日
受託者 〇〇 〇〇  ㊞

※記録としてこのような書類を残していないと、どのような趣旨の振り込みかが分からなくなりますので、面倒でも書面を作成するようにしましょう。

4.信託契約の内容の変更

家族信託は場合によっては数年続く事があります。

その為、当初の信託契約の内容を変更した方が良い事も発生するでしょう。

その時は信託契約に基づき、契約の内容の変更を行います。

         不動産管理処分信託の変更契約書(例)委託者兼受益者〇〇及び受託者〇〇は、委託者兼受益者と受託者の間の平成〇年〇月〇日付け不動産管理処分信託契約(以下、「本信託契約」という。)に関して、本信託契約第〇条の信託の変更の合意条項に基づき、本信託契約につき下記のとおりの変更(以下、「本信託変更契約」という。)を行うことに本日合意した。変更する事項
変更前の信託条項
第〇条 〇〇〇〇〇〇〇
変更後の信託条項
第〇条 〇〇〇〇〇〇〇

平成〇年〇月〇日
委託者兼受益者  〇〇 〇〇 ㊞
受託者      〇〇 〇〇 ㊞

5.まとめ

家族信託における財産の管理は後日のトラブルを防止する為に、基本的には書面を作成する事が必要になってきます。

特に収支面は不明点があった場、非常にトラブルになりやすい為、後でまとめて記録にするのではなく、収支が発生した毎にこまめに記録をするようにしましょう。

それが、家族信託を問題なく続けて行くための大切な一歩となっていくのです。

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