家族信託の注意点・デメリットについて

家族信託の基本

家族信託は後見制度では難しい、自由な財産管理を行う事が出来ます。

さらに家族信託には、もし委託者が認知症になっても、事前に決めた通りの財産管理・処分ができると言った最大のメリットがあります。

しかし、メリットがあれば当然注意すべき点やデメリットが存在ます。

このページでは、その家族信託における注意点やデメリットをご紹介したいと思います。

1.家族信託の注意点

① 専門家が少ない

家族信託の元になる、現在の信託法は平成19年に改正されたばかりの新しい法律です。

その為、解釈が分かれる条文について、確立した判例も少ない事から、法律的な判断が難しい場合があります。

また、信託法の条文自体が非常に複雑、難解な為、勉強を行うのにも時間がかかります。

その結果、信託法について積極的に勉強をしている専門家がまだまだ少なく、相談者にとってみれば相談窓口が限られているのが現状です。

② 成年後見制度と異なり、身上監護ができない

後見制度には、本人(被後見人)が適切に生活できるように、介護保険や病院などの身の上の手続きをする「身上監護権」が後見人にはあります。

しかし、家族信託はあくまで財産管理に関する制度であり、受託者には身上監護権はありません。

その為、身上看護が必要となった時は、家族信託とは別に、成年後見制度を利用する必要があります。

③ 相続税対策等、節税にはならない

家族信託の相談の中で、税制上のメリットを良く聞かれるのですが、家族信託を利用する事自体に節税の効果はありません。

なお、相続税対策を行っている高齢者の方が家族信託を活用し、ご家族の方に引き続き相続税対策を行ってもらう事例はあります。

しかし、これは継続的に相続税対策を行う手段として、家族信託を利用しているだけの事で、家族信託そのものに節税効果はありません。

④ 家族信託は認知症になってからできるか?

信託契約、遺言信託等、どのような方法の家族信託であれ、委託者の意思能力・判断能力がある事が大前提になります。

認知症にはほとんど生活に問題がないレベルから、完全に意思能力・判断能力が無い状態まで様々です。

その為、家族信託の事を十分に理解する事が出来るのであれば、認知症になってからも家族信託が出来ると言えますが、その判断は慎重に行うべきです。

もし委託者候補者の方が認知症の場合、必ず専門家に相談するようにして下さい。

⑤ 信託契約書のひな型、フォーマットについて

最近は各メディアで家族信託が取り上げられており、インターネット上で信託契約書のひな型が沢山紹介されています。

しかし、そのひな型を何も考えずにそのまま使用する事は大変危険です。

ひな型の中には、信託法の趣旨から考えて間違っているものが多々あります。

また、条文そのものは間違ってはいないのですが、その時その時の事情によって致命的な問題が発生するひな型もあります。

信託は非常に汎用性がある仕組みであり、そのご家庭のご事情に合わせたオーダーメイドの信託契約書を作成する必要があります。

何も考えずにひな型(当サイトでご紹介しているものもそうです)を利用した結果、本当に致命的な問題が発生する場合があります。

信託契約書のひな型を利用する場合は良く考え、自己責任の元で利用するようにして下さい。

⑥ 契約書は公正証書で作成する必要があるか?

自己信託(信託宣言)を除いて、公正証書で契約書等を作成しなくても問題はありません。

しかし、銀行等、当事者ではない外部の人間に契約書を提示する事もあり、場合によっては、家族信託が問題無く成立した事を証明する必要があるかもしれません。

その為、信託契約書は公正証書で作成する事をお勧めします。

⑦ 家族信託のやり方によっては想定外の税金がかかる事がある

家族信託は原則として受益者に対して贈与税や相続税と言った税金が課税されます。

委託者=受益者の場合は実質的な財産の移動はなく、税金は課税されないのですが、複雑な家族信託を行った場合、想定外の税金を課税される可能性があります。

2.家族信託のデメリット

① 信託財産の名義は、受託者名義になる

家族信託では、信託財産を受託者が管理・処分を行う必要があるため、信託財産の名義は受託者名義になります。

・不動産 → 受託者名義になる。
・預貯金 → 専用の信託口口座で管理。

実はこの「財産の名義が受託者に移る」と言う事に、非常に抵抗感を持っている委託者(予定)の方がいらっしゃるのです。

苦労して手に入れた自分の財産のはずなのに、その名義を変えられるのは納得いかない!

確かに、財産の名義は委託者から受託者へ移ります。

しかし、それは委託者、受託者で決めた信託の内容を実現させる為に移るだけです。

受託者は、信託契約で決めた内容以上の事は行う事は出来ません。

また、信託財産から得られる利益(自宅に住み続ける権利等)はあくまで受益者のものとなります。

つまり、受託者は財産の管理権限だけがあり、その財産からは何ら利益を得る事は出来ないのです。

② 受託者には様々な義務がある

受託者には信託法上、様々な義務が課せられています。

代表的なものを挙げると、「善管注意義務」ですね。

他人の物を預かって管理・処分を行うわけですから、自分の物を扱う以上の注意しなければいけませんよ、と言う義務です。

※ただし、善管注意義務は信託の内容でその注意義務のレベルを軽減する事も出来ます。

その他、財産管理を行った事による収入と支出の動きをきちんとノートにまとめたり、様々な義務があります。

③ 誰も受託者をやりたがらない、もしくは適任者がいない場合がある  

上記のとおり、受託者には法律上様々な義務が課せられていて、中途半端は気持ちではその業務を行う事は難しい事は容易に想像できると思います。

その為、受託者候補の方から、「そんな重い責任を負いたくない」と、受託者を断られる事が少なくありません。

また、そもそも受託者としての適任者がいない場合があります。

④ 場合によっては信託は何十年も続く事がある

家族信託は委託者が元気な内に受託者と行う契約です。

その為、場合によっては何十年も続く事があり、その間、信託によって当事者が拘束する事になります。

委託者としては受託者を昔は信頼してたけど、次第に信頼関係が無くなってきて、家族信託をやめたい!と思うかも知れません。

受託者にしても、最初はやる気に燃えていたけれど、次第に信託財産の管理が面倒になり、どんどんやる気が無くなった、と言う事もあるでしょう。

このような事がある為、

『信託の開始時の当事者に何かの事情が発生した場合にどうするのか?』

を最初の段階でしっかりと決めておく必要があります。

⑤ 専門家に対する費用が高い

家族信託は法律の構造が非常に難しく、誰でも相談にのる事が出来るわけではありません。

その為、家族信託の相談料やコンサルティング料金は、遺言や相続手続きと比べて高めに設定されている事があります。

ただし、費用対効果を考えれば、後見制度等を利用した場合に比べて、家族信託の相談料やコンサルティング料金はけっして高いわけではありません。

⑥ 損益通算ができない

事業を行っている方は「損益通算」についてご存知だと思いますが、家族信託を行った場合、孫関通産が出来なくなります。

例えば、アパート経営で赤字になったとしても、他の所得から赤字を控除する事はできません。

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