浪費家の子供ではなく、孫に確実に財産を残したい場合の家族信託

家族信託の活用事例

孫は非常に可愛く、自分の財産を孫にも相続させたいと思う方もいらっしゃると思います。

しかし、

「孫は可愛くても子供はちょっと問題がある。特に金銭管理については・・・」

と言う状況の場合、孫に財産を相続させても、子供に浪費されてしまうかもしれません。

そのような問題も、家族信託を活用する事で解決する事ができるのです。

1.具体的事例紹介

太郎さんは今年73歳になる男性です。

そろそろ相続の事を考えようと、遺言を作成しようとしているのですが、そこで非常に悩んでいるのです。

実は太郎さんにはお孫さんの健太君(10歳)がいるのですが、太郎さんは健太君の事を大変可愛がっており、遺言で自分の財産を相続させたいと思っています。

ところが健太君の父(太郎さんの息子)の一郎さんは非常に浪費家であり、健太君にそのまま財産を残すと一郎さんがその財産を使い込む可能性があるのです。

一郎さんには遺留分のみを与え、健太君にきちんと財産が渡るような方法が無いか、太郎さんは日々悪戦苦闘中なのです。

2.親が子供の財産を管理する理由 -親権について-

① 親権の内容

みなさんが子供の時に大きな金額のお金を誰かから貰った時、親に「管理するから」と言う理由で、お金を親に取られた(預けた)事はありませんか?

そもそも、どうして未成年の子供の財産は両親が管理するのか?と言うところから話しをスタートしたいと思います。

その理由、親は法律上、子供に行う親権の内容として財産管理権があるからです。

親権の内容は大きく分けて身上監護権と財産管理権に分けることができます。

民法824条
「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」

民法にこのような規定があるため、法律上、親は子供の財産を管理する事が出来るのです。

(だから子供の時にお年玉を親に取られた人も多いはず。)

② 親の財産管理に問題がある場合

ただし、親が浪費家等で財産管理のやり方に問題がある場合、そのまま子供の財産を管理させていては、子供の大切な財産が無くなってしまいます。

その場合は親権の喪失、停止、管理権の喪失の審判と言う制度を利用し、子供の財産を守る事が考えられます。

しかし、家庭裁判所での手続きですのでそれぞれ手間と時間がかかるのが問題点です。

3.家族信託以外の方法はあるか・・・?

① 遺言

遺言で孫の大地君に財産を残す事が考えられますが、そのまま財産を渡してしまえば、その財産は一郎さんの管理下に置かれるでしょう。

つまり、一郎さんが浪費する可能性が非常に高くなります。

その為、例えば甥っ子の二郎さんに対して財産を渡し、その財産から毎月一定額を大地君に支払う事を約束させる遺言を書く事が考えられます。

ところがこのような遺言は果たして有効なのか?と言う問題がでてきます(いわゆる負担付遺贈とも性質が違いますので)。

そして二郎さんにどのような税金が発生するのか(相続税?贈与税?)も不明確であり、法律上非常に不安定な方法と言えます。

② 孫名義の銀行口座を開設する

銀行で大地君名義の口座を開設し、そこにお金を振込む事で、一郎さんに財産の管理をさせないと言う方法が考えられます。

しかし、最近は金融機関の本人確認が非常に厳しい為、他人名義の口座がそもそも開設出来るのか?と言う問題があります。

また、仮に開設出来たとしても、太郎さんと大地君との贈与契約の実態が無ければ、大地君名義の口座であっても、実質は太郎さんの財産と認定され、結果、相続財産となる事もあります。

つまり、現状の方法では太郎さんの悩みを解決する事は中々難しいと言えます。

4.家族信託を活用した場合 -財産管理権分離信託-

委託者を太郎さん、受託者を甥っ子の二郎さん、受益者を大地君とする、遺言信託を活用します。

信託の内容は、

・毎月一定額のお金を二郎さんから大地君に渡す。
・若しくは大地君が成人し、両親が親権を行使する必要が無くなったら一括でお金を渡す。

と言う内容にします。

このような内容にすれば、二郎さんが太郎さんからお金を預かる法的な根拠も発生しますし、一郎さんに財産を管理させる事によって大地君の財産を浪費させる事も無くなります。

なお、注意点としては、遺言による信託ですので、受託者となる二郎さんには事前に事情を説明しておき、根回しをしておく必要があるでしょう。

また、委託者と受益者が別人のため、税金が課税されますので、その点に関するフォローも必要になってくるでしょう。

5.まとめ

通常の相続であれば、相続人に一度にまとまった財産が渡ってしまう為、その事に事例のような様々な問題も起こりえます。

しかし、家族信託を利用すれば、財産の渡し方そのものに非常に自由度を持たせる事が可能となるのです。

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