認知症になっても家族信託を行う方法

家族信託の応用

こんにちは。

さて、上記のタイトルを見てこのページをご覧になられたと言う事は、おそらくあなたには認知症の親がいて、その親のために家族信託を行いたいのだと思います。

最初にお伝えしておきます。

認知症の人が家族信託を行うのは、不可能ではありませんが、非常に難しいです。

認知症の方の家族信託は簡単ではない事。

まずはこの点について、誤解が無いようお願い致します。

「それでも構わない」と思われた方のみ、これより以下のページをご覧下さい。

さて、認知症と言うのはあくまで医療上の話しですので、認知症=家族信託ができない、と言うわけではありません。

しかし、認知症の方は家族信託を行う前提である、「意思能力」が欠けている場合があるのです。

それではその判断をどのようにすれば良いのか?

後日トラブルにならない為にはどうすれば良いのでしょうか?

1.認知症の方が、家族信託を行うのが難しい理由

どうして認知症の方が家族信託を行うのが難しいのか?

一言で言えば、家族信託が「法律行為」だからです。

法律行為とは、

一定の法律上の効果が発生する事を期待してする行為

の事です。

そして、この法律行為を有効に成立させる為には「意思能力」が必要になってきます。

意思能力とは、

意思表示などの法律上の判断について、自分の行為の結果を判断することができる能力(精神状態)

の事を指します。

例えば、売買の売主であれば、
「何をいくらで売るのか?」
「売る事でどのような結果になるのか?」
これをキチンと判断する事ができる能力の事です。

ここまでくれば、もうお分かりでしょう。

家族信託は委託者と受託者で契約を行う必要があったり、遺言等で行う必要がある、法律行為です。

その法律行為を行うために必要な「意思能力」を、認知症の方は欠いている場合があるのです。

(認知症の方は、話していた内容や、さっき行った行動を忘れてしまうぐらいですから、意思能力が非常に厳しいのです。)

ただし、認知症は日常生活にほとんど問題がないレベルから、一人では全く何もできないレベルまで様々です。

その為、「認知症になったら絶対に家族信託は不可能」とは言えません。

とは言え、後々家族信託の無効を主張されたり、様々なトラブルを防止するため、その判断は慎重に行う必要があるのです。

2.認知症の方が作成した遺言が無効になった事例

ここで、家族信託ではないのですが、認知症の方が作成した遺言について裁判で争われ、後日その遺言が無効と判断された事例をご紹介しましょう。

これを知る事で、

「どのような状態であれば、認知症であっても有効な法律行為を行う事が出来るのか?」

と逆説的に考える事ができるでしょう。

公正証書遺言が無効とされたとある事例です。

・長谷川式評価スケールでの点数は9点。
・遺言の内容が比較的複雑だった。
(遺産の一部のみを共同で相続させる、遺言執行者を複数人指定するなど)
・遺言作成時、公証人が遺言内容を読み上げたものに対して「はい」などという簡単な肯定の言葉しか口にしなかった。

意思能力の有無はその時に行われた法律行為で相対的に考えますので、この事例をそのまま家族信託に当てはめる事は出来ませんが、十分参考になると思います。

① 長谷川式評価スケールについて

「長谷川式評価スケール」とは、認知症の可能性があるかどうかを、簡易的に調べる問診項目のことです。

(※長谷川式評価スケールだけでは、認知症とは判断されません。)

主に医師が診察の一手段として使用します。

年齢や現在の時間等、全9項目の質問事項があり、正しくできたら1点、できなかったら0点等と数値化し、30点満点中20点以下の人は認知症の疑いが高いと判断されます。

事例の場合では9点でかなり低い点数であり、認知症が進行していた可能性があります。

② 法律行為の内容の容易さ、複雑さについて

事例では遺言の内容が比較的複雑だった事もあり、この点も遺言が無効である判断材料の一つとされました。

逆に遺言の内容が簡単であった為、認知症でも遺言が有効と判断された判例もあります。

つまり、法律行為の内容(複雑さ)も有効無効の判断材料の一つになります。

この点、家族信託はその内容が複雑で、信託契約書の条文数も多くなりがちですので、要注意でしょう。

③ 話しを理解する力、コミュニケーション能力について

事例では、遺言者が簡単な肯定の言葉しか口にできず、この点も遺言の有効無効の判断材料とされています。

認知症の方は、話しが理解できていなくても「はい」と言ってしまいます。

家族信託の内容をキチンと理解しているかを確認するには、質問方法やコミュニケーションの行い方を考える必要があるでしょう。

3.認知症の方が家族信託を行う上での判断基準

① 銀行で本人がお金を引き出す事ができるか?

基本的には現金を信託財産としますので、ご本人が意思表示を行い、ご自身の預金を引き出す事が出来なかったり、振込を行う事が出来なければ家族信託は無理でしょう。

銀行に同行して、ご本人が銀行員に対してきちんと意思表示ができるかどうか、確認を行い、家族信託が可能かどうかの判断を行うのです。

② 医師に診断書をお願いする

医師に家族信託の事を十分に説明して、「家族信託を行う事ができる意思能力がある」旨を記載した診断書を作成してもらいましょう。

③ 打合せの内容を含め全てのやりとりを動画に残す

家族信託は関係者(委託者や受託者)と何度も打合せを重ねる必要があるのですが、その打合せの内容を本人の了承のもと、全て動画で撮影します。

・家族信託は本人の意思で行っている事。
・どうして家族信託を行いたいのか?
・誰を受託者にしたいのか、その理由は?
・何を信託財産にしたいのか?
・その他、家族信託の内容を理解しているのか?

このような事を、後日の証拠として残すのです。

この段階で家族信託を行う必要性を理解していなかったり、話しが二転三転してかみ合わないようであれば、家族信託を行う事を諦めた方が良いでしょう。

④ 信託契約書は絶対に公正証書で

信託契約書は公正証書で作成する必要はないのですが、委託者(予定)であるご本人が認知症である場合、必ず信託契約書は公正証書で作成するようにしましょう。

公証人もご本人に意思確認を行いますし、その段階で意思能力に問題があるようであれば、やはり家族信託は諦めましょう。

なお、信託契約書を作成する場面も必ず動画で撮影するようにして下さい。

4.まとめ

このように、認知症の人が家族信託を行う為には、様々な事を考慮しなくてはダメで、けっして簡単ではないのです。

これだけの手間をかけても家族信託を行う事が出来ない事もありますので、家族信託を検討する場合は、早めに動くようにして下さい。

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